数年前、友人である高速道路交通警察隊の隊員が体験した不可解な事件があった。深夜、東北自動車道で4人家族が乗った車が中央分離帯に衝突し、悲惨な事故で家族全員が命を失った。事故現場には長距離トラックの通報によって友人が駆けつけたが、家族はすでに黒こげになっていたという。
その家族は東京西多摩地方に住む加藤家で、父親の正さん、母親の恵美さん、長男の正一くん、長女の恵那さんの4人が犠牲になった。事故の原因は不明で、通常のハンドル操作ミスとして処理されたが、後日、家族と名乗る謎の少年が警察署に現れ、自分も事故で亡くなったはずだが生きていると訴えた。少年は一家の行方を尋ね、自分が目覚めた時には家族が消え、ニュースで家族全員が亡くなったことを知ったのだった。
警察は再調査を行い、少年の話を確認するが、長男とされた遺体と少年の歯型が異なり、別人であると結論付けられた。その後、少年は心療内科に入院し、事故後に家に住んでいた形跡はなかった。この謎多き事件は解決せず、少年の正体も、家族がなぜ知人のいない東北自動車道で事故に遭ったのかも未だに不明のままである。
この出来事は、友人にとっても解決のつかない謎として残り、彼は「あの家族は何かから逃れようとしていたのではないか」と語っている。しかし、何から、なぜ逃れようとしていたのかは、今となっては誰にもわからない。この不可解な事件は、未解決のまま時の中に消えていった。